誤解だらけの建設業許可
このブログでお伝えしたいことは、一式工事業(土木工事業・建築工事業)の許可だけを受けている建設業者は、消費税込みで500万円以上の専門工事を請負いすることができない、ということです。
専門工事に係る許可を受けてください、ということです。
一式工事業(土木工事業・建築工事業)の許可を受けていると、どんな専門工事の建設工事の請負いをすることができる、と思っていらっしゃる方が多いのです。
どういうことなのか、ということをご案内したいと思います。
まず、建設業許可の特殊性であると私が思っているのですが、建設業許可を受けなくてもよい場合と受けなければならない場合との仕組みをご紹介します。
軽微な工事のみを請け負う建設業者は建設業許可を受けなくても営業できます。
建設業を営むには、建設業許可が必要とされるのですが、「軽微な工事のみ」を請け負って営業する業者は、必ずしも建設業許可を受けなくてもよいということです。
これは、建設業許可の特殊性だと私は思っています。
軽微な工事とは、
建築一式工事の建設工事(建築工事業)では、
・工事1件の請負金額の額が消費税込みで1.500万円未満の工事
・延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
建築一式工事(建築工事業)以外の建設工事、つまり、土木一式工事(土木工事業)と27の専門工事業では、
・工事1件の請負金額が消費税込みで500万円未満の工事
のことをいいます。
この限度を超える建設工事を請け負って営業すれば無許可営業となります。
建設工事の種類ごとにそれぞれ対応する許可を受ける
建設業や建設工事といっても、その内容は広汎多岐にわたっており、種々なものがあります。
建設業法は、建設業の業種を、建設工事の種類ごとに区分し、その業種ごとに建設業の許可が必要であることとしています。
最下部に掲載しています「建設工事の種類別内容と例示」を見て下さい。
建設業法で定める「建設工事の種類」、
それを施工する建設業の「業種」(許可を受ける業種)、
その「建設工事の内容」と「建設工事の例示」
が一覧となっています。(大阪府の建設業許可の手引き第6章参考資料から)
建設工事の業種は、土木一式工事(土木工事業)と建築一式工事(建築工事業)の2つの一式工事業とそれ以外の27の工事業を専門工事業といい、合計29業種があります。
建設業の許可を受けようとする場合は、この29業種のうちから、あなたが建設工事の請負営業をしようとする建設工事から考えて、必要な業種1つ以上を選び、その業種に必要な技術者を持つなどの許可要件を備えて、許可を申請することとなります。
2つの一式工事業
土木一式工事(土木工事業)、建築一式工事(建築工事業)の2つの一式工事は、他の27の専門工事と異なり、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する工事であり、2つ以上の専門工事をいわば有機的に組み合わせて建設工事を行う場合を想定している業種です。
土木一式工事(土木工事業)は、道路工事、宅地造成工事、ダム工事などの大規模な土木工作物の建設工事、
建築一式工事(建築工事業)は、住宅の新築工事や増築工事、ビルやマンションなどの新築工事などです。
いわばゼネコン的な建設工事を請負う場合の許可ということです。
1棟の住宅建設やダム工事全体を請け負うことができますが、その工事内容をなす大工工事、屋根工事、内装仕上工事、電気工事、管工事、建具工事、とび・土工・コンクリート工事、防水工事などの専門工事を実際に施工するにあたっては、次の対応をしなければなりません。
・自らその専門工事に必要な技術者を置いて施工する、か、
・その専門工事業の許可を受けた建設業者に下請負に出し施工させなければなりません。
また、ここが誤解されているところなのですが、一式工事の許可受けた業者(土木工事業・建築工事業)が、他の専門工事を単独で請け負う場合は、その専門工事業の許可を受けなければならないということです。
たとえば、建築一式工事(建築工事業)の許可を受けた業者が、屋根のふき替えのみを請け負ったり、店舗の模様替えのみを請け負う場合には、それぞれ、屋根工事業、内装仕上工事業の許可が必要であり、家屋の解体工事には、解体工事業の許可が必要となります。
また、土木一式工事(土木工事業)の許可を受けた業者が、簡単な盛土工事とか、グラウト工事、くい打ち工事のみを請け負う場合も、とび・土工工事業の許可が必要となります。
なお、この場合、許可を受けなければならないのは、
建築一式工事(建築工事業)の許可を受けた業者は、
・消費税込みで500万円以上の工事(専門工事業の許可or土木工事業の許可)
土木一式工事(土木工事業)の許可を受けた業者は、
・消費税込みで1.500万円以上の建築一式工事(建築工事業の許可)
・延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事(建築工事業の許可)
・消費税込みで500万円以上の建築一式工事以外の工事(専門工事業の許可)
の場合です。
軽微な工事の場合は、許可を受けなくても請負いできるとされています。
27の専門工事業
1.大工工事業、
2.左官工事業、
3.とび・土工工事業、
4.石工事業、
5.屋根工事業、
6.電気工事業、
7.管工事業、
8.タイル・レンガ・ブロック工事業、
9.鋼構造物工事業、
10.鉄筋工事業、
11.舗装工事業、
12.しゅんせつ工事業、
13.板金工事業、
14.ガラス工事業、
15.塗装工事業、
16.防水工事業、
17.内装仕上工事業、
18.機械器具設置工事業、
19.熱絶縁工事業、
20.電気通信工事業、
21.造園工事業、
22.さく井工事業、
23.建具工事業、
24.水道施設工事業、
25.消防施設工事業、
26.清掃施設工事業、
27解体工事業
の27業種を専門工事業とよんでいます。
たとえば、大工工事の請負を営業しようとすれば、大工工事業のために必要な技術者などの要件を整え、大工工事業の許可を受けなければ、大工工事業を請け負うことはできないのです。
同様に、管工事業の許可を受けていたとしても、大工工事を請負営業すれば、無許可営業となりますし、また大工工事業者が屋根工事の請負営業をすれば、同じく無許可営業となります。
なお、この場合、許可を受けなければならないのは、
・消費税込みで500万円以上の工事(専門工事業の許可or土木工事業の許可)
・消費税込みで1.500万円以上の建築一式工事(建築工事業の許可)
・延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事(建築工事業の許可)
の場合です。
軽微な工事の場合は、許可を受けなくても請負いできるとされています。
附帯工事
許可を受けていない業種の建設工事を請け負うことはできないと申し上げました。
しかし、許可された業種の建設工事を請け負う場合に、本体工事に附帯する工事(これを附帯工事といいます。)については、発注者の利便性の観点から、本体工事と併せて請負うことができます。
たとえば、屋根工事業者が、金属製の屋根の補修を請け負った場合に、その屋根工事の一部に塗装する必要があるときは、発注者が希望すれば、屋根補修工事と一体として塗装工事をも屋根工事業者が請け負うことができます。
この場合には、この塗装工事が附帯工事となり、請け負うことができますが、実際に施工する場合には、次の対応をしなければなりません。
・屋根工事業者が塗装工事業の許可を受けるために必要な技術者を自ら置いて施工する、か、
・塗装工事業の許可を受けた建設業者に下請負に出し施工させなければなりません。
なお、附帯工事となるのは、消費税込みで500万円以上の工事の場合です。
軽微な建設工事の場合は、許可を受けなくても請負いできるとされています。
どの業種の許可を受ければよいのか?
再度「建設工事の種類別内容と例示」を見て下さい。
建設工事の種類に対する許可業種、その建設工事の内容とその例示として具体的な工事の主なものが記載されています。
この例示も、現在における代表的なものが掲げられているのですが、建設業の技術の向上や取引慣行の進展に伴い、次々と新しい建設工事が現れることが考えられます。
したがって、どの業種の許可を受ければよいのかの判断に当たっては、「建設工事の内容」を中心に考えて、建設工事の内容を理解した上で、自己の保有する技術能力、経営経験など対応する業種に当てはめて考えてみるとよいでしょう。
誤解だらけの建設業許可
最初にも申し上げましたが、このブログでお伝えしたいことは、一式工事業の許可(土木工事業・建築工事業)だけを受けている建設業者は、消費税込みで500万円以上の専門工事を請負いすることができない、ということです。
専門工事に係る許可を受けてください、ということです。
これは、大阪府建築振興課が配布しています「建設業法令遵守について」に記載されています「建設業法に基づき処分された主な事例」の一つとして注意を促しています。
建築士の資格や施工管理技士の資格をお持ちの方の建設業許可の依頼を受け、お話をしていますと、建築系の専門工事や土木系の専門工事も、建築一式工事(建築工事業)なり土木一式工事(土木工事業)に分類してもいいのではないか、という誤った理解をしている方が結構いらっしゃいます。
知らないうちに建設業法違反になることにもなりかねません。この点はよくご理解いただきたいと思っています。 なお、間違いなどにお気づきの方は、ご一報ください。再考してみます。
【参考】建設工事の種類別内容と例示
大阪府の建設業許可の手引き第6章参考資料から引用したものです。
行政書士・宅地建物取引士・終活アドバイザー 白神英雄